フェルマーのクリスマス定理を拡張して証明してみる
そもそもフェルマーのクリスマス定理とは
フェルマーのクリスマス定理とは、かの有名な数学者ピエール・ド・フェルマーが証明した、「平方数の和で表される素数の条件」に関する定理です。
フェルマーのクリスマス定理
ある素数pが
p=a2+b2(a,bは0でない整数)
の形で書けることは、「p=2またはpが4で割って1余る数であること」と同値である。
メルセンヌ素数でよく知られているメルセンヌに、フェルマーがこの証明を報告するべく手紙を送ったのが1640年12月25日であったことから、フェルマーのクリスマス定理と名がついたそうです。
フェルマーのクリスマス定理を拡張してみる
フェルマーのクリスマス定理の証明は可換環の概念を導入することによって証明ができますが、その証明の過程を見ると、定理を拡張して、以下の命題も証明できそうです。
フェルマーのクリスマス定理の拡張
ある素数pが
p=a2+ab+b2(a,bは0でない整数)
の形で書けることは、「p=3またはpが3で割って1余る数であること」と同値である。
この命題を証明している記事や論文などが見つからなかったので、私が証明してみました。(数学が専門ではないため、間違いなどありましたら指摘してください。)
証明全体の流れ
証明全体の流れは下の通りです。ただし、p=3のときはa=b=1とすれば成立し、p=2のときは、p=a2+ab+b2の形で表すことができないので、以下においては常に3より大きい素数pについてのみ考えるものとします。
(i)「p≡1(mod 3)」⇔「単項イデアル(X2+X+1)が多項式環Fp[X]の極大イデアルでない」を示す。
(ii)「単項イデアル(X2+X+1)が多項式環Fp[X]の極大イデアルでない」⇔ 「イデアルpZ[2−1+−3]が可換環Z[2−1+−3]の極大イデアルでない」を示す。
(iii)「イデアルpZ[2−1+−3]が可換環Z[2−1+−3]の極大イデアルでない」
⇔
「整数a,bを用いて、p=a2+ab+b2と表せる」を示す。
(i)の証明
まず、「多項式環Fp[X]のイデアルはすべて単項イデアルである」……(Ⅰ)を示します。
(証明)Iを多項式環Fp[X]の任意のイデアルとします。
- I={0}のとき
I=(0)なので、たしかに単項イデアルです。
- I=0のとき
Iの元のうち0でないものが存在し、その中で次数が最小のものをA(X)とします。Iの任意の元f(X)をA(X)で割ったときの商をB(X)、余りをC(X)(B(X),C(X)∈Fp[X])とすると、
f(X)=A(X)B(X)+C(X)
を満たします。これを変形すると、
C(X)=f(X)−A(X)B(X)
となりますが、ここで、A(X),f(X)∈IかつB(X)∈Fp[X]より、C(X)∈Iがわかります。
さらに、C(X)はA(X)よりも低次であること、および、A(X)がIの0でない元のうち最低次であることを踏まえると、
C(X)=0
したがって、Iの任意の元f(X)は単項イデアル(A(X))の元であるので、
I⊂(A(X))
また、A(X)∈Iであることから、
(A(X))⊂I
も成り立ちます。
以上を合わせて、I=(A(X))が言えます。
したがって、多項式環Fp[X]の任意のイデアルは単項イデアルであることが示されました。
次に、「単項イデアル(X2+X+1)が多項式環Fp[X]の極大イデアルでない」⇔「X2+X+1=(X−a)(X−b)を満たす有限体Fpの元a,bが存在する」を示します。
(証明)
1.「X2+X+1=(X−a)(X−b)を満たす有限体Fpの元a,bが存在する」⇒「単項イデアル(X2+X+1)が多項式環Fp[X]の極大イデアルでない」の証明
X2+X+1=(X−a)(X−b)より、単項イデアル(X−a)は、
Fp[X](X−a)(X2+X+1)
を満たすので(X2+X+1)は極大イデアルではありません。
2.「単項イデアル(X2+X+1)が多項式環Fp[X]の極大イデアルでない」⇒「X2+X+1=(X−a)(X−b)を満たす有限体Fpの元a,bが存在する」の証明
(X2+X+1)はFp[X]の極大イデアルでないので、
Fp[X]⊋I⊋(X2+X+1)
を満たすイデアルIが存在します。(Ⅰ)より、Iは単項イデアルです。
よって、I=(f(X))なるf(X)(∈Fp[X])が存在し、I⊋(X2+X+1)より、f(X)の次数は1で、1次の係数は1としてよいので、f(X)=X−aをみたすa∈Fpが存在します。
よって、X2+X+1=(X−a)(X−b)をみたすb∈Fpも存在します。
以上より、「単項イデアル(X2+X+1)が多項式環Fp[X]の極大イデアルでない」⇔
「X2+X+1=(X−a)(X−b)を満たす有限体Fpの元a,bが存在する」が示されました。
ここで、上のa,bがa=b……(Ⅱ)を満たすことを示します。
(証明)
X2+X+1=(X−a)(X−b)=X2−(a+b)X+ab
より、有限体Fpの元として、a+b=−1かつab=1が成り立ちます。
ここで、a=bと仮定すると、
a=2−1かつa2=1⇔⇔⇔a=2−1かつ41=1a=2−1かつ1=4a=2−1かつ0=3
が成立します。
ところが、今、3より大きい素数pについて考えているので、有限体Fp上において0=3とはなり得ません。よって、元の仮定が誤りであり、a=bであることが示されました。
続いて、「X2+X+1=(X−a)(X−b)を満たす有限体Fpの元a,bが存在する」⇔「Xp−1−1がX2+X+1で割り切れる」を示します。
(証明)pが素数であること、および、フェルマーの小定理より、有限体Fp上の0に等しくない元aに対しては、
ap−1−1=0
が成り立ちます。よって、
Xp−1−1=(X−1)(X−2)⋯(X−p+2)(X−p+1)
と因数分解できることがわかります。
ここで、a,bはab=1を満たすことより、a=0かつb=0であることと、(Ⅱ)より、X2+X+1=(X−a)(X−b)と因数分解できるとき、Xp−1−1は(X−a)(X−b)で割り切れます。すなわち、X2+X+1で割り切れます。
逆に、Xp−1−1がX2+X+1で割り切れるとき、上の因数分解の結果から、X2+X+1=(X−a)(X−b)の形で表せることが即座に分かります。
最後に、「Xp−1−1がX2+X+1で割り切れる」⇔「p≡1 (mod3)」を示します。
(証明)
1.「Xp−1−1がX2+X+1で割り切れる」⇒「p≡1(mod3)」の証明
Xp−1−1がX2+X+1で割り切れるとき、p≡0,2 (mod 3)であったと仮定します。
1-a.p≡0 (mod 3)のとき
3より大きい素数で、かつ、3で割り切れるものは存在しないので不適です。
1-b. p≡2 (mod 3)のとき
pは3より大きい素数でかつ、今、p−2は3の倍数であるので、
Xp−1−1===Xp−1−Xp−2+Xp−2−1Xp−2(X−1)+(X3−1)(Xp−5+Xp−8⋯+X3+1)Xp−2(X−1)+(X2+X+1)(X−1)(Xp−5+Xp−8⋯+X3+1)
よって、Xp−2(X−1)がX2+X+1で割り切れることが分かりますが、
02+0+1=1,12+1+1=3
より、pが3より大きいことも考慮すると、X2+X+1はxもX−1も因数に持たないので、これはあり得ません。
よって、元の仮定が誤りであり、p≡2(mod3)
以上より、p≡0,2(mod3)が示されたので、「Xp−1−1がX2+X+1で割り切れる」⇒「p≡1 (mod 3)」が示された。
2.「p≡1 (mod 3)」⇒「Xp−1−1がX2+X+1で割り切れる」の証明
p≡1(mod3)およびpは3より大きい素数であることから、自然数nを用いてp=3n+1と表せます。このとき、
Xp−1−1===X3n−1(X3−1)(X3n−3+X3n−6+⋯+1)(X2+X+1)(X−1)(X3n−3+X3n−6+⋯+1)
よって、Xp−1−1がX2+X+1で割り切れることが示されました。
以上より、「Xp−1−1がX2+X+1で割り切れる」⇔「p≡1 (mod 3)」が示されました。
以上すべての議論を合わせると、
「p≡1(mod3)」⇔「単項イデアル(X2+X+1)が多項式環Fp[X]の極大イデアルでない」が証明されました。
(ii)の証明
「Z[2−1+−3]/pZ[2−1+−3]≃Fp[X]/(X2+X+1)」を示せばよいです。
まず、Fp[X]/(X2+X+1)≃Z[X]/(p,X2+X+1)を示します。
(証明) aを可換環として、Iをそのイデアルとします。また、Aˉ=A/Iとします。
このとき、I⊆J⊆Cを満たす任意のイデアルJとCˉのイデアルJˉを取ります。
可換環の射f:C→Cˉ∣c→c+I(c∈C)について考えます。任意のa′,b′(∈Jˉ)、c′∈Cに対して、a′=a+I,b′=b+I,c′=c+Iとなる、a,b(∈J)、c(∈C)が存在して、
a′+b′=(a+I)+(b+I)=a+b+I=f(a+b)∈f(J)c′a′=(c+I)(a+I)=ca+I=f(ca)∈f(J)
となることから、f(J)はCˉのイデアルです。
Iを含むCのイデアルJ1,J2があって、f(J1)=f(J2)を満たすと仮定すると、J1の任意の元j1について、f(j1)=j1+I=f(j2)を満たすJ2の元j2が存在して、
j1−j2∈I⊆J2
を満たすので、J1⊆J2が分かります。
同様にして、J2⊆J1も分かるので、J1=J2
また、f−1(Jˉ)=J∗とおくと、I=0+Iより、IはCˉの零元であるので、I⊆Jˉを満たします。よって、f−1(I)⊆J∗が分かります。
任意のa,b∈J∗,c∈Cに対して、
f(a+b)=a+b+I=(a+I)+(b+I)∈Jˉf(ca)=ca+I=(c+I)(a+I)∈Jˉ
であるから、J∗はCのイデアルです。
以上より、fは全単射であることが分かりました。
ここで、C=Z[X],I=pZ[X],J=(p,X2+X+1)とすれば、Jˉ=(X2+X+1)となって、それぞれの商環が1対1に対応するので、
C/J≃Cˉ/Jˉ⇔Fp[X]/(X2+X+1)≃Z[X]/(p,X2+X+1)
が成り立ちます。
次に、Z[X]/(X2+X+1)≃Z[2−1+3]を示します。
(証明)P∈Z[X]とすると、
P=(X2+X+1)Q+R (Q,R∈Z[X],Rは1次以下の式)
なるQ,Rがただ1組存在します。
よって、Z[X]/(X2+X+1)においては、Pˉ=Rˉとなるので、Z[X]/(X2+X+1)の元はすべて、
αXˉ+β(α,β∈Z)
ただ1通りに書き表せます。
同様に、Z[2−1+−3]の元は全て、
α′2−1+−3+β′ (α′,β′∈Z)
の形に書き表せます。
ここで、f:Z[X]→Z[2−1+−3]∣X→2−1+−3なる可換環の射fを定めれば、f(X2+X+1)=0より、商環の普遍性から、商環への標準全射p:X→Xˉに対して、f=fˉ∘pなる可換環の射fˉがただ一つ存在して、この場合fˉ:Z[X]/(X2+X+1)→Z[2−1+−3]∣Xˉ→2−1+−3です。
上の議論から、fˉは全単射であることが分かるので、Z[2−1+−3]≃Z[X]/(X2+X+1)が示されました。
以上の議論をまとめて、Z[2−1+−3]/pZ[2−1+−3]≃Fp[X]/(X2+X+1)が証明されました。
(iii)の証明
まず、Z[2−1+−3]のイデアルはすべて単項イデアルであることを示す。
(証明)0でないZ[2−1+−3]のイデアルIの要素のうち絶対値が正で最小のものをαとします。また、ここではω=2−1+−3と表します。
α,ωα,(ω+1)αを複素数平面上に図示すると以下のようになります。

イデアルIの任意の元βは、Z[2−1+−3]の元q,rを適切に選ぶことで、
β=qα+r(rは上図のひし形の内部または周上の点に対応する値)
と表せる。
なぜなら、q=a+bω(a,b∈Z)と表すとすると、aを1増やすことは、rを−αだけ平行移動させることに対応し、bを1増やすことはrを−ωαだけ平行移動させることに対応するので、適切にa,bを増減させれば、この平行四辺形内に移動が可能だからです。
ひし形のO以外の頂点とちょうどrが一致した場合は、適切にa,bを増やすことで、Oに対応させます。
このとき、rもイデアルIの元となるが、仮にひし形の内部または周上の点であってO以外の点に対応したと仮定すると、∣α∣の最小性に反します。よって、平行移動した点は必ずOに一致することが分かります。
すなわち、イデアルIの任意の元βは、必ずZ[2−1+−3]の適切な元qを用いて、
β=qα
の形で必ず表せることが分かったので、Iは単項イデアルであることが示されました。
これを用いて、「イデアルpZ[2−1+−3]が可換環Z[2−1+−3]の極大イデアルでない」⇔「整数a,bを用いて、p=a2+ab+b2と表せる」を示します。
(証明)
1.「イデアルpZ[2−1+−3]が可換環Z[2−1+−3]の極大イデアルでない」⇒「整数a,bを用いて、p=a2+ab+b2と表せる」の証明
イデアルpZ[2−1+−3]が可換環Z[2−1+−3]の極大イデアルでないということは、
Z[2−1+−3]⊋I⊋pZ[2−1+−3]
を満たすイデアルIが存在するということです。
Iは上で証明した事実から単項イデアルであるので、Z[2−1+−3]の元の1つa−b2−1+−3を用いて、
I=(a−b2−1+−3)
と表せます。
集合の包含関係から、pはイデアルIの元であり、Iが単項イデアルであることも考慮すると、
p=(a−b2−1+−3)(c−d2−1+−3)
を満たすc,d∈Zが存在します。
両辺の共役複素数をとると、
p=(a−b2−1−−3)(c−d2−1−−3)
これらを辺々かけると、
p2=(a2+ab+b2)(c2+cd+d2)
ここで、
a2+ab+b2=(a+2b)2+43b2≧0
であり、同様にしてc2+cd+d2≧0も分かるので、
(a2+ab+b2,c2+cd+d2)=(1,p2),(p2,1),(p,p)
の3通りが考えられる。
1-a. (a2+ab+b2,c2+cd+d2)=(1,p2)のとき、
(a−b2−1+−3)(a−b2−1−−3)=1
となります。ここで、
a−b2−1−−3=(a+b)+b2−1+−3(∈Z[2−1+−3])
であるので、(a−b2−1+−3)(a−b2−1−−3)すなわち1はIの元だと分かります。
1∈Iより、1とZ[2−1+−3]の元の積は全てIの元であるから、Z[2−1+−3]⊂Iが言えます。
しかし、これはZ[2−1+−3]⊋Iに矛盾。
1-b.(a2+ab+b2,c2+cd+d2)=(p2,1)のとき、
p=(a−b2−1−−3)(c−d2−1−−3)
の両辺に(c−d2−1−−3)をかけて、
p(c−d2−1−−3)=a−b2−1+−3
ここで、p(c−d2−1−−3)=p{(c+d)+d2−1+−3}はpZ[2−1+−3]の元であるから、a−b2−1+−3はpZ[2−1+−3]の元であることが分かります。
したがって、
I=(a−b2−1+−3)⊂pZ[2−1+−3]
となるが、これはI⊋pZ[2−1+−3]に矛盾します。
以上より、
(a2+ab+b2,c2+cd+d2)=(p,p)
であるので、「イデアルpZ[2−1+−3]が可換環Z[2−1+−3]の極大イデアルでない」⇒「整数a,bを用いて、p=a2+ab+b2と表せる」が示されました。
2.「整数a,bを用いて、p=a2+ab+b2と表せる」⇒「イデアルpZ[2−1+−3]が可換環Z[2−1+−3]の極大イデアルでない」の証明
整数a,bを用いて、p=a2+ab+b2と表せるので、
p=(a−b2−1+−3)(a−b2−1−−3)
と因数分解できます。
このとき、I=(a−b2−1+−3)なる単項イデアルIを考えると、pはイデアルIの元となるので、pとZ[2−1+−3]の任意の元の積もイデアルIの元となります。すなわち、
I⊃pZ[2−1+−3]
が言えます。
また、a,bがともにpの倍数であったと仮定すると、a2+ab+b2はp2の倍数となりますが、これはp=a2+ab+b2に矛盾するので、a,bのうち少なくとも一方はpの倍数でないです。つまり、a−b2−1+−3はpZ[2−1+−3]の元ではありません。
したがって、
I⊋pZ[2−1+−3]
が言えます。
ここで、Iが1を元に持つと仮定すると、
1=(a−b2−1+−3)(c−d2−1+−3)
をみたすc,dが存在することになります。
両辺の共役複素数をとると、
1=(a−b2−1−−3)(c−d2−1−−3)
これらを辺々かけて、
1=(a2+ab+b2)(c2+cd+d2)
となります。a2+ab+b2≧0かつc2+cd+d2≧0であることも考慮すると、
a2+ab+b2=c2+cd+d2=1
が分かりますが、これはpが素数であることに矛盾します。
よって、Iは1を元に持たず、
Z[2−1+−3]⊋I
であることが分かります。
したがって、「整数a,bを用いて、p=a2+ab+b2と表せる」⇒「イデアルpZ[2−1+−3]が可換環Z[2−1+−3]の極大イデアルでない」が示されました。
以上をまとめて、「イデアルpZ[2−1+−3]が可換環Z[2−1+−3]の極大イデアルでない」⇔「整数a,bを用いて、p=a2+ab+b2と表せる」が示されました。